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育児期の親自身の人生記録 — 自伝的記憶と新しい章

執筆: 森口 蓮音2026年5月13日 公開2026年5月18日 更新読了時間 約 6 分English version available
対象
子どもを持つ保護者(自分自身の変化に気づき始めた人々)

3行まとめ

  • ·自伝的記憶は固定された記録ではなく語るたびに再構成され現在の自分の状態によって意味が変わるものであり、育児記録の中の「自分」を読み返すことは過去の自分と現在の自分をつなぐ能動的な作業だ
  • ·親になることはmatrescenceと呼ばれる身体的・心理的・社会的な発達的転換であり、以前「産後の適応問題」として病理的に扱われてきた揺らぎや自己喪失感を発達の必然として再位置づけする視点は、記録の書き手の変容をも説明する
  • ·育児期の困難を「ただ大変だった」で閉じるのか「あの時期があって自分はこうなった」と接続できるのかが、その後の人生物語の質に影響しうるというMcAdamsの知見は、記録が保存以上の意味を持つことを示す

目次

  1. リード
  2. 自伝的記憶とは何か
  3. 親になることという発達的転換
  4. Eriksonのgenerativityと、次世代への関心
  5. 親の物語の中の「育児期」という章
  6. 記録とは何か、という問いの100本目の答え
  7. まとめ
  8. References

リード

育児記録とは、子どもの記録だ、と思っていた。

しかしある日気づく。記録の中に、自分がいる。子どもが初めて笑った日の短い一行に、「今日はあまり眠れていない」と添えてある。午前二時の授乳記録には時刻だけがある。入園の朝の写真の隅に、自分の指が写っている。

子どもの成長記録は、親自身が変容した時代の地層でもある。この記事は、育児期に親が経験する「自分の物語の書き換え」について書く。そしてMemoriコラム全100本のしめくくりとして、記録という行為の意味をもう一段引いた視点から問い直したい。

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