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育児と仕事の同時マネジメント — work-family spillover の研究

執筆: 森口 蓮音2026年5月13日 公開2026年5月18日 更新読了時間 約 5 分English version available
対象
育児期に就労している保護者

3行まとめ

  • ·仕事と育児の葛藤は時間ベース・ストレスベース・行動ベースの三種類に分類されており、個人の管理能力の問題ではなく役割間の構造的な干渉として説明される
  • ·出産後に女性の有償労働が大幅に縮小し無償育児が大幅に拡大する「再伝統化」は当事者の意志ではなく職場環境・柔軟な働き方へのアクセス格差・性別役割の慣性から生じており、問題を「誰が休むかの話し合い」に帰着させることは構造的非対称を個人に帰責することになる
  • ·仕事と育児は一方向的なトレードオフではなく、仕事で培ったスキルが家庭での対応力を高め育児での経験が職場での共感力に転用されるというwork-family enrichmentのプロセスも実証的に示されている

目次

  1. リード
  2. conflict と enrichment:二つの方向性
  3. 親になることで広がる時間の不均等
  4. テレワーク・COVID後のコホートが示すもの
  5. family-friendly policy は何を変えるか
  6. 記録という日常的な整合行為
  7. まとめ
  8. References

リード

子どもが熱を出した朝、仕事の締め切りが重なる。保育園からの電話に出た瞬間、会議の内容が頭から飛ぶ。夜、子どもを寝かしつけたあと、メールを開くと仕事の緊張感が戻ってきて眠れない。

仕事と育児が互いに干渉する、この日常的な経験には、40年以上の研究史がある。「なぜ起きるのか」「どの程度起きるのか」「何が緩和するのか」——これらを体系的に問うてきた学術的枠組みがwork-family spillover: 仕事と家族の役割が互いに「こぼれ出して」干渉し合う現象。葛藤の方向にも、豊かさの方向にも作用しうると考えられているだ。

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