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「日本で麻疹が出た」が意味すること — WHO排除認定後の輸入症例と重症性

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対象
MRワクチンの接種記録を確認したい保護者、渡航前に子どもの接種歴を見直したい親
文字数目安
1,400字
ステータス
ドラフト v1

3行まとめ

  • ·麻疹は先進国でも肺炎5%・脳炎0.1〜0.2%・死亡0.1〜0.2%が報告される「軽くない感染症」であり、2歳未満での感染はSSPE(致死的神経疾患)のリスクが大幅に高まる
  • ·2015年のWHO排除認定後も輸入症例は定期的に発生し、集団免疫の維持には接種率95%以上が必要で未接種の層が輸入例拡大の足場になる
  • ·MRワクチン2回接種で有効率95〜99%を達成でき、母子手帳で1期・2期両方の記録があるかを確認することがすべての出発点になる

目次

  1. リード
  2. 麻疹は「軽い病気」ではない
  3. 「排除認定」が意味すること
  4. MRワクチンの有効性と2回接種の意義
  5. 渡航前の確認
  6. まとめ
  7. References

リード

空港や病院を起点にした麻疹感染の報道が、数年に一度ニュースになる。2015年にWHOから「麻疹排除国」として認定された日本では、自国での常在的な流行はないが、海外からウイルスが持ち込まれる「輸入症例」は定期的に発生する。

「ワクチンを2回打っていれば安心か」「接種記録が見当たらない場合どうすればいいか」——こうした問いに答える前に、麻疹という感染症の重症性を正確に把握することが出発点になる。


麻疹は「軽い病気」ではない

麻疹: はしかとも呼ばれる、麻疹ウイルスによる感染力の極めて強い感染症。高熱・発疹・粘膜症状を伴い肺炎や脳炎を起こすことがあるウイルスは空気感染: 乾燥した飛沫核が空気中を漂い、離れた人が吸い込むことで感染する経路。麻疹・結核などごく一部の病原体に限られる(飛沫核感染)し、感染力は既存のウイルスの中でも最強クラスだ。一人の感染者が免疫のない集団の中で12〜18人に感染させるとされる。

重症合併症の頻度として、先進国での疫学データでは肺炎合併が約5%、脳炎が0.1〜0.2%、死亡が0.1〜0.2%程度と報告されている [1]。発展途上国ではビタミンA欠乏などが重なり、これより高い死亡率となる。WHOは2024年の時点でも全世界で年間数万人の麻疹死亡者を報告している [6]。

加えて重要なのが「亜急性硬化性全脳炎: 麻疹感染の数年〜十数年後に脳の神経細胞が広範に侵される進行性の難病。治療法がなく予後不良で、乳幼児期の感染ほどリスクが高い(SSPE)」だ。麻疹に感染してから7〜10年後に発症する慢性進行性の神経疾患で、有効な治療法がなく致死的経過をたどる。発症率は全感染者の1/100,000〜1/10,000とされるが、2歳未満での麻疹感染ではリスクが大幅に高まるとする報告があり [4]、乳幼児期の感染予防の根拠のひとつになっている。


「排除認定」が意味すること

WHOの麻疹排除認定は「12ヶ月以上にわたって自国内での持続的な感染連鎖がない」ことを意味するが、「輸入例がゼロ」ではない。海外での流行地(フィリピン、ウクライナ、欧州の一部など、時期によって異なる)から帰国した感染者が国内で感染を広げるリスクは継続して存在する [6]。

2019年に日本でも輸入例を起点にした感染拡大が複数県で報告された。航空機内での接触、病院内での二次感染という形で広がるケースが典型だ。集団免疫の維持には接種率95%以上が必要とされており、ワクチン未接種の層があると輸入例が拡大する足場になる [1]。


MRワクチンの有効性と2回接種の意義

麻疹含有ワクチン(MR)の2回接種による発症予防有効率は95〜99%とされる [1]。集団免疫の観点から、この水準の接種率を維持することが排除状態を保つための条件だ。

日本の定期接種スケジュールは1期(1歳)と2期(就学前年度)の2回だ。母子手帳で両方の接種日が記録されているかを確認することが、まず行うべき確認になる。

接種歴が不明な場合や、1回しか記録がない成人も含め、麻疹抗体が不十分と考えられる場合は追加接種という選択肢がある。過剰接種(抗体があるのに打つ)のリスクは限定的であり、記録が不明な場合は接種を選ぶ方向での医師への相談が多くのガイドラインで推奨されている [1]。


渡航前の確認

海外渡航を予定している場合、目的地での麻疹流行状況を事前に確認し、子どもの接種歴が2回完了しているか確認する。流行地への渡航では、乳幼児(生後6〜11ヶ月)への早期接種(定期外)という選択肢もあるが、この場合は1歳以降に改めて2回の定期接種が必要になる。


まとめ

麻疹は排除認定を受けた今でも、輸入症例を通じたリスクが続く感染症だ。合併症の頻度と、特に2歳未満感染でのSSPEリスクを知ることが、ワクチン2回完了の動機づけにつながる。「記録が見当たらない」という場合でも、かかりつけ医への相談から始めることができる。


References

  1. Strebel PM, Papania MJ, Dayan GH, Halsey NA. Measles vaccines. In: Plotkin SA, Orenstein WA, Offit PA, eds. Vaccines. 7th ed. Philadelphia: Elsevier; 2018.
  2. Mina MJ, Metcalf CJE, de Swart RL, Osterhaus ADME, Grenfell BT. Long-term measles-induced immunomodulation increases overall childhood infectious disease mortality. Science. 2015;348(6235):694–699. doi:10.1126/science.aaa3662. PMID: 25954009.
  3. 国立感染症研究所. 麻疹 感染症発生動向調査. IASR. 2024.
  4. Buchanan R, Bonthius DJ. Measles virus and associated central nervous system sequelae. Semin Pediatr Neurol. 2012;19(3):107–114. doi:10.1016/j.spen.2012.02.003. PMID: 22889558.
  5. de Swart RL, Ludlow M, de Witte L, et al. Predominant infection of CD150+ lymphocytes and dendritic cells during measles virus infection of macaques. PLoS Pathog. 2007;3(11):e178. doi:10.1371/journal.ppat.0030178. PMID: 18020706.
  6. WHO. Measles. Fact sheet. 2024.

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