子どもの教育費、どう備えるか — 学資保険・NISA・就学援助の現在地

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対象
子どもの教育費を考え始めた保護者(乳幼児〜小学校低学年の子を持つ)
文字数目安
1,800字
ステータス
ドラフト v1

リード

子どもの教育費を「備える」方法は複数ある。学資保険、親名義のNISAの活用、就学援助制度。それぞれ性格が異なるので、「何のための」「どの段階の」備えかを分けて考えると選択が整理しやすくなる。

感情的な「子どもへの投資」という言葉に流される前に、制度の構造と数字を一度確認する価値がある。以下は日本の制度を前提とした整理だ。

まず知っておきたい教育費の規模感

文部科学省の調査では、大学4年間の学費(授業料・入学料)は国立大学で約243万円(2023年度入学)、私立文系で約384万円程度とされている。高校3年間も含めれば、小学校入学から大学卒業までの18年間に数百万〜1,000万円超の教育費が発生するのは珍しくない [1]。

「全額を自分で備えなければ」という前提で考えると選択が歪む。奨学金、就学援助、児童手当などの制度を組み合わせることが前提であり、「自分が準備すべき額」から逆算することが出発点になる。

就学援助 — 最も知られていない制度

学校教育法第19条に基づき、市区町村は経済的に困難な家庭の小中学生に、学用品費・給食費・修学旅行費等を補助している(就学援助制度)[2]。

文部科学省の就学援助実施状況等調査(令和4年度)では、準要保護者(市区町村が生活保護に準ずる状態と認定した世帯)の受給率は全児童生徒の15.1%だ [3]。都市部・特定自治体では20%超の地域もある。申請していない対象者が一定数存在すると、複数の調査・研究が指摘している。

就学援助は「生活保護世帯だけが対象」ではない。認定基準は自治体ごとに異なり、所得水準だけでなく家族構成・医療費等も考慮される場合がある。「うちには関係ない」と思い込まずに、居住市区町村の教育委員会または学校の担任に確認することが有効な選択肢だ。

2024年改正後の児童手当

2024年10月施行の「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律」により、児童手当は所得制限が撤廃され、支給対象が高校生(18歳年度末)まで延長された [4]。旧「特例給付(月5,000円)」は廃止され、所得上位層も一律の金額に統一されている。

第1子・第2子の場合、3歳未満15,000円/月、3歳〜小学校修了10,000円/月、中学生10,000円/月、高校生10,000円/月というスキームで、累計すると一定の金額が積み上がる(第3子以降は3歳〜高校生で30,000円/月に増額)。

この児童手当を受け取っている口座に「放置」するのではなく、定期預金・NISAの積み立て等に回す仕組みを作っておくことが、教育費の自然な積み立てになる。

学資保険の位置づけ

学資保険は、子どもの教育費を目的とした貯蓄型保険商品だ。主要商品の返戻率(払込総額に対する受取総額の比率)は100〜110%前後が多い [5]。インフレ率や株式等への投資機会と比較すると、純粋な「運用」としての効率は高くない。

学資保険が持つ合理的な機能は「」だ。保険料を支払っている親(契約者)が死亡・高度障害状態になった場合、その後の保険料の支払いが免除され、満期時に給付金を受け取れる仕組みになっている。これは「親の万一の場合の教育費の確保」という保障機能であり、投資商品としてではなく保険商品として位置づけると合理性がある。

すでに契約している場合は、途中解約は元本割れになるケースが多いため、継続が原則的には有利だ。新規加入を検討する場合は、返戻率と他の選択肢(NISAの積み立て等)の期待収益を比較した上で判断することが望ましい。

ジュニアNISA廃止後の資産形成

ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)は2023年末で新規拠出が終了した(廃止)[6]。2024年以降、18歳未満の子どもが使える独立した非課税口座は存在しない。

代替として一般的になっているのは、親名義の新NISAの枠(年間360万円・生涯1,800万円)を子どもの教育費の積み立て目的で活用する方法だ [7]。ただし法的には親名義の資産であり、「子どもの財産」ではない点に注意が必要だ。子どもへの贈与や相続の文脈では別途の手続きが必要になる。

新NISAの積み立て投資枠(年120万円)を利用した長期積み立ては、手数料の低いインデックスファンドを活用することで、学資保険の返戻率を上回る期待収益が見込める場合がある。ただし元本保証がなく、積み立て終了時期の市場環境によって実際の受取額が変わることを前提として考える必要がある [7]。

行動レベルへの落とし込み

  1. 就学援助は申請主義: 「うちは対象外」と思い込まず、市区町村の教育委員会または小学校の担任に「就学援助の申請条件を教えてほしい」と確認する。毎年の申請が必要な自治体が多い
  2. 学資保険を契約済みの場合: 解約より継続が有利なケースが多い。新規加入を検討している場合は返戻率と新NISAの積み立て利回り(期待値)を数字で比較する
  3. 児童手当を「放置」しない: 毎月の給付を受け取っている口座に自動的に積み立てる設定を作る。NISAでも定期預金でも、仕組みを作ることが重要だ
  4. 子どもの発達に特別な支援が必要な場合: 特別児童扶養手当(U-2参照)や特別支援教育就学奨励費など、教育費に特化した支援制度も存在する

まとめ

教育費の備えに正解の一つはないが、「最も知られていない制度(就学援助)」「2024年に大きく変わった制度(児童手当)」「廃止になった制度(ジュニアNISA)」を整理しておくことで、選択の地図が描きやすくなる。

感情ではなく制度の構造と数字で考えることが、長期にわたる教育費の準備の出発点になる。


References

  1. 文部科学省私学行政課. 私立大学等の初年度授業料等の平均額の推移. 2023.
  2. 学校教育法第19条(就学援助). e-Gov 法令検索.
  3. 文部科学省. 就学援助実施状況等調査(令和4年度). 2023. https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/05010502/1349044.htm
  4. こども家庭庁. 児童手当制度の概要(令和6年10月改正後). 2024. https://www.cfa.go.jp/policies/child-allowance/
  5. 金融広報中央委員会. 子どもの将来費用と金融商品の選択に関する調査. 2022.
  6. 金融庁. ジュニアNISAの廃止について. 2023. https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/junior/index.html
  7. 金融庁. 新しいNISA制度のポイント(2024年). https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/
  8. Loke YK, Derry S. Evidence of systematic reviews on financial education for children and adolescents: a scoping review. BMC Med Educ. 2021;21(1):1–9. doi:10.1186/s12909-021-02578-0