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就学前の1〜2年間は、複数の制度的な「分岐点」が重なる時期だ。保育所・認定こども園の退所、就学時健診、就学相談、学区外通学申請、学童申請。それぞれが別の窓口で動いていて、締め切りの時期も春・秋・冬とバラバラだ。
「来年の春に向けて何をすればいいか」を一度俯瞰できれば、準備の見通しが立てやすくなる。以下は日本の制度を前提としているが、特別支援教育の文脈と一般的な就学手続きを並列で示している。
保育所入所の仕組みと「保活」
認可保育所の入所選考は、児童福祉法第24条に基づき市区町村が行う [1]。保護者の就労状況等を「保育の必要性」として認定し(1号・2号・3号認定)、認定の種類と希望の施設に応じて選考が進む。
認定こども園は「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」(認定こども園法)に基づく施設で、幼稚園機能と保育所機能を合わせ持つ [2]。入所申請の時期・手続きは施設種別と設置主体によって異なる。
いわゆる「保活」の激しさは地域差が大きく、都市部の認可保育所の競争率は高い水準を維持している。入所申請のタイミング(多くは10〜11月頃)を逃すと次の選考まで待つことになるため、早期に自治体の案内を確認することが必要だ。
就学相談 — 1〜2年前から始められる
小学校就学に関して発達上の課題や障害がある、またはその可能性がある場合、就学相談を利用できる。就学相談は教育委員会が運営し、子どもの発達の状態に応じた就学先(通常学級・特別支援学級: 障害のある子どもが在籍し、個別の教育的ニーズに応じた少人数指導を受けるクラス・特別支援学校等)を相談・検討する機会を提供する [3]。
通常学校・特別支援学校の就学区分の基準は学校教育法施行令第22条の3に規定されているが、2013年の改正により「認定特別支援学校就学者」の判断は保護者の意見を最大限尊重する仕組みに変更された [4]。「専門家が一方的に決める」のではなく、保護者・本人・学校・医療機関等が協議するプロセスになっている。
就学相談の利用は入学1〜2年前から可能だ。「相談だけ」という使い方も積極的に認められている。早い段階で教育委員会の就学相談窓口と接触しておくことで、就学先の選択肢を広げる準備ができる。
文部科学省の特別支援教育資料によると、小中学校の特別支援学級在籍者数は2012年の18万人から2022年には34万人超と10年で約2倍に増加している [5]。通級指導教室(週数時間だけ特別指導を受ける仕組み)の利用者数も増加傾向にある。
学区と学区外通学申請
居住地に基づく就学先(学区の学校)の指定は市区町村が行い、それ以外の学校への就学は学校教育法施行令第9条に基づく申請が必要だ [6]。学区外通学が認められるかどうかは申請理由と自治体の方針によって異なる。
特別支援の観点から(例:隣の学区に特別支援学級があるが自分の学区にはない、等)学区外申請をする場合は、別枠での検討がなされる場合がある。居住自治体の教育委員会に直接確認するのが最も確実な方法だ。
学童保育(放課後児童クラブ)の申請
放課後児童健全育成事業(学童保育)は児童福祉法第6条の3第2項に基づく制度で、小学校に通う子どもが放課後・長期休暇中に過ごす場所を提供する [1]。
こども家庭庁の調査によると、令和5年5月時点で全国の学童保育利用者数は143万人超、うち待機児童は1万6,000人となっている [7]。利用希望者数は増加傾向にある一方、施設の整備が追いついていない地域もある。
申請タイミングは市区町村ごとに異なるが、小学校1年生の4月入所を希望する場合は11月〜1月に締め切りが集中することが多い。「来年の春から入れたい」と思ったら、遅くとも秋の時点で自治体の案内を確認しておく必要がある。
制度の移行で生じやすい「記録の空白」
保育所・認定こども園から小学校への移行は、保育要録(保育施設が作成する成育記録)の引き継ぎを伴う [4]。発達上の課題がある子の場合は特に、保育施設での支援の経緯・対応方法が小学校に適切に引き継がれることが重要だ。
Okamoto ら(2019)は日本における早期介入: 発達の問題が顕在化する前または初期段階に療育・支援を行い長期的な影響を改善しようとするアプローチの現状と課題を論じており、就学移行期の情報連携が支援の継続性に影響を与えることを指摘している [8]。
保護者の側からも「どんな情報を小学校に伝えるか」を保育施設の担当者と相談しておく価値がある。記録は育児記録アプリや手書きノートなど、形式を問わず手元にも保管しておくと、転居や担当者交代があった際にも情報が途絶えない。
行動レベルへの落とし込み
- 就学前の1〜2年前: 地元の教育委員会の就学相談窓口に一度連絡してみる。特別支援に関する相談の場合は早いほど選択肢が広い
- 秋(10月〜11月): 学童保育の申請締め切りを自治体のWebサイトで確認する。認可保育所の選考申請も同時期に集中する
- 保育施設への確認: 小学校への保育要録の引き継ぎについて、年度末前(遅くとも2月頃)に担任や施設長に確認しておく。特別支援が必要な場合は個別支援計画の内容も含めて確認する
- 学区外通学を検討する場合: 居住市区町村の教育委員会に「どのような理由なら学区外申請が認められるか」を直接問い合わせる。特別支援目的の申請は一般申請と別の扱いになる場合がある
まとめ
保育所入所から小学校就学まで、制度の切り替わりには複数の手続きが散在している。就学相談は入学直前ではなく1〜2年前から利用できる。学童保育の申請は秋に締め切りが集中する。そして保育要録という「記録の橋渡し」が就学移行期の支援継続性を左右する。
制度の入口を早めに確認しておくことは、特別支援が必要かどうかにかかわらず、すべての就学前の保護者に意味がある。
References
- 児童福祉法第24条(保育所入所)、第6条の3第2項(放課後児童健全育成事業). e-Gov 法令検索.
- 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(認定こども園法). e-Gov 法令検索.
- 文部科学省. 就学相談・就学支援シート等について. 初等中等教育局特別支援教育課.
- 文部科学省. 就学基準の改正について(平成25年改正). 初等中等教育局特別支援教育課. 2013.
- 文部科学省. 特別支援教育資料(令和5年度). https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/1406456_00010.htm
- 学校教育法施行令第9条(就学校の指定・変更)、第22条の3(特別支援学校就学基準). e-Gov 法令検索.
- こども家庭庁. 令和5年放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況. 2023. https://www.cfa.go.jp/
- Okamoto Y, et al. Early identification and intervention for children with developmental disabilities in Japan: current situation and challenges. Brain Dev. 2019;41(8):651–658. doi:10.1016/j.braindev.2019.04.012. PMID: 31043286
- 日本特殊教育学会. 特別支援教育における就学移行支援に関する研究の動向. 特殊教育学研究. 2021;59(1):1–12.