リード
養子や里子として育てるとき、「この子に何を伝えるか」という問いは、発達のかなり早い段階から姿を現す。告知をいつするか、どう話すか、生物学的な背景をどこまで共有するか——これらは単なる育児上の選択ではなく、アイデンティティと記憶に関わる倫理的な問いだ。
その問いに対して、研究は処方箋を与えてくれるわけではない。しかし、養子・里子の発達を長期追跡した研究や、告知・オープンアドプションに関する研究は、思慮ある選択のための素材を提供してくれる。この記事では、その知見を整理する。
養子縁組は「介入」として機能する
van IJzendoorn と Juffer(2006)は、270以上の研究・23万人以上の養子とその比較対象を対象にしたメタ分析: 複数の研究データを統合し、より信頼性の高い推定値を得る統計手法を実施し、養子縁組が発達上の「介入」として機能するという「大規模なキャッチアップ(massive catch-up)」モデルを提案した [1]。
身体的成長・愛着・認知発達・学業達成の各領域で、養子は施設養護のまま育った子どもに比べて著しく良い発達を示した。特に12ヶ月未満の早期養子縁組が、後の養子縁組に比べてより完全なキャッチアップと関連していた [1]。
同時にメタ分析は、養子が非養子の子どもと比べると、特に愛着・身体発育・学業達成の一部の領域で依然として差があることも示している。「養子縁組で問題がなくなる」ではなく、「施設養護に対しては大きく改善し、家庭内養育の基準に近づく」というのが、より正確な読み取りだ [1]。
ルーマニア孤児研究が示すこと
Rutter らによる英国・ルーマニア養子縁組(ERA)研究は、1989年以降の政権崩壊後にルーマニア孤児院から英国の家庭に引き取られた子どもたちを縦断的に追跡した一連の研究だ。2007年には、施設内で深刻な剥奪を経験した養子とそうでない国内養子の比較が行われた [2]。
施設内剥奪: 養育・栄養・刺激などが著しく欠如した環境に置かれることを経験したルーマニア養子の9.2%に、対照群(0%)では見られなかった準自閉症様パターン(quasi-autism)が確認された [2]。またこれらの子どもでは、脱抑制型: 場所・人を問わず誰にでも親密に近づく愛着行動の異常パターンの愛着行動や注意・行動の問題も高率に見られた。
ERA 研究の意義は、「施設内剥奪の深刻さと期間」が発達上の脆弱性と結びついていること、そしてそれにもかかわらず、多くの子どもが家庭内養育によって大きな回復を示したことを両立して示している点にある。剥奪の影響は現実だが、回復の可能性もまた現実だ。
告知——いつ、どのように
Brodzinsky(2011)は、子どもが養子縁組をどのように理解するかの発達的変化と、告知に関する臨床的指針をまとめた [3]。
子どもの認知発達から見ると、3〜4歳頃には「自分は養子だ」という事実を言葉として受け入れられるが、その意味(「別の人が生んだ」という概念)の本当の理解は6〜7歳以降に深まる。中学生になると、アイデンティティの問いと結びつき、出自への疑問が再活性化することも多い。
Brodzinsky は、告知を「一度する出来事」ではなく「継続的な対話のプロセス」として捉えることを提案している [3]。子どもの理解度に合わせて、少しずつ語を増やし、問いに応えていくことが、単発の「告知」よりも子どものアイデンティティ形成を支えることが多い。
「いつ告知するか」については、早期告知(幼児期)を支持する研究者が多い。「知らなかった」から「知った」への移行より、「最初から知っていた」という文脈の連続性が、青年期のアイデンティティ危機を和らげるとされる。ただし、これも個々の状況・文化・家族の関係性によって異なる。
オープンアドプションの効果
Grotevant ら(2013)のミネソタ・テキサス養子縁組研究プロジェクトは、養子縁組後の生みの親との接触(コンタクト)を長期的に追跡した [4]。生みの親との接触がある養子は、そうでない養子に比べて接触への満足度が高く、満足度が高いほど青年期・成人初期の適応が良好であることが報告されている [4]。
「オープン(生みの親との接触あり)」対「クローズド(接触なし)」という単純な二項対立ではなく、接触の質と当事者の満足度が鍵であることが、この研究の重要な示唆だ。接触があっても当事者が求めていない場合は効果が見られない場合もある。
記録の二重性——生物学的記録と養育記録
養子・里子の育児において、記録は特別な役割を持つ。育てている親の記録だけでなく、子どもが「自分はどこから来たか」を将来知るための資料としての側面がある。
生みの親に関する情報——出自の文化、生物学的家族の健康歴、生まれた状況——は、子どもが成長してから自分のアイデンティティを形成する際の材料になる。その情報を整理し、アクセスできる形で保存しておくことは、今の養親・里親ができる長期的な贈り物だ。
同時に、養育の記録——「あなたと過ごした日々」のタイムライン——は、「生んだわけではないが、育てた」という関係の確かな証拠になる。Memori のような育児記録アプリで年月を追って積み上げた記録は、生物学的なつながりとは独立した関係の重みを持つ。
まとめ
養子・里子の発達をめぐる研究は、早期の家庭内養育が施設養護に対して持つ圧倒的な効果を示す一方で [1,2]、施設での深刻な剥奪が残す影響も現実として記述している。告知は一度きりの出来事ではなく継続的な対話であり [3]、生みの親との接触は当事者の意向と質が重要だ [4]。
記録は、この複雑さと誠実に向き合う手段になり得る。養育の記録と出自に関する記録の両方が、将来の子どもを支えることができる。
References
- van IJzendoorn MH, Juffer F. The Emanuel Miller Memorial Lecture 2006: adoption as intervention. Meta-analytic evidence for massive catch-up and plasticity in physical, socio-emotional, and cognitive development. J Child Psychol Psychiatry. 2006;47(12):1228–1245. doi:10.1111/j.1469-7610.2006.01675.x
- Rutter M, Kreppner J, Croft C, et al. Early adolescent outcomes of institutionally deprived and non-deprived adoptees. III. Quasi-autism. J Child Psychol Psychiatry. 2007;48(12):1200–1207. doi:10.1111/j.1469-7610.2007.01792.x. PMID: 18093025
- Brodzinsky DM. Children's understanding of adoption: developmental and clinical implications. Prof Psychol Res Pr. 2011;42(2):200–207. doi:10.1037/a0022415
- Grotevant HD, McRoy RG, Wrobel GM, Ayers-Lopez S. Contact between adoptive and birth families: perspectives from the Minnesota/Texas adoption research project. Child Dev Perspect. 2013;7(3):193–198. doi:10.1111/cdep.12039. PMCID: PMC3743089
- Rutter M, Beckett C, Castle J, et al. Effects of profound early institutional deprivation: an overview of findings from a UK longitudinal study of Romanian adoptees. Eur J Dev Psychol. 2007;4(3):332–350. doi:10.1080/17405620701401846