リード
ある日、子が玄関で靴を履きながら「だってもうお兄ちゃんだもん」と言う。下の子が生まれたわけでもない。誰かに言われたわけでもないように見える。それでもその日から、自分のことを少し違う言葉で語り始める。
その一方で、夜の歯磨きでは「ママが磨いて」と甘え、保育園の朝には「だっこ」とせがむ。前進と退行のあいだを行ったり来たりする時期だ。
5〜6 歳は、子どもが「自分とは誰か」を、それまでよりも明確な輪郭で語り始める時期にあたる。鏡の前で自分を認識するという乳児期の課題から続く長い線の、ひとつの結節点である。この記事では、自己概念が立ち上がるとはどういうことかを、発達心理学の古典研究を経由しながら整理する。