耳・鼻・目の異物 — 家庭でできること、してはいけないこと

読了時間 約 4 分English version available
対象
1〜4歳の子をもつ保護者
文字数目安
1,200字
ステータス
ドラフト v1

リード

子が鼻にビーズを入れた。綿棒で取ろうとして奥に押し込んだ——こういう経過は小児救急外来でよく聞かれるパターンだ。異物の対処で最初にやるべきことは「取る」ではなく「確認する」であり、部位によって対処法はまったく異なる。


鼻腔の異物

鼻腔異物は1〜4歳に多く、ビーズ・豆・おもちゃの小部品などが多い [1]。片側の鼻から悪臭を伴う鼻汁が続く場合は、異物が見落とされているサインのことがある。

家庭で試せる対処(kissing technique)

物体が鼻腔の入口付近に見えている場合に限り、「kissing technique」を1〜2回試すことができる。親が子の口を覆うように密着し、詰まっていないほうの鼻孔を指で押さえ、口から息を吹き込む。陽圧で異物が押し出されることがある。Finkelstein の報告ではこの方法で成功した症例が記述されており、一定の有効性が示されている [2]。ただし、以下の場合は試さずに耳鼻科を受診する。

禁忌: 綿棒・ピンセットで盲目的に掻き出そうとすること。異物を奥に押し込み、副鼻腔・咽頭への移行を招く。


耳道の異物

小児の外耳道異物では食物・ビーズ・昆虫が多い。Schulze らの698例の分析でも、異物の種類によって取り出し方法が大きく変わることが示されている [3]。

昆虫が入った場合

虫が生きている場合、掻き出そうとすると刺されたり深く入ることがある。消毒用エタノールまたは温めたオリーブ油・ベビーオイルを数滴耳道に注入して虫の動きを止め、その後耳鼻科を受診するのが安全な選択肢だ。

硬い物体(ビーズ・豆・小石など)

触らずに耳鼻科受診。棉棒で押し込むと鼓膜損傷の可能性がある。

電池類

外耳道内でも電気分解によるが起きるリスクがある。即座に耳鼻科または救急受診が必要だ。


眼の異物と化学外傷

眼の対処は物質によって緊急度が大きく異なる。

砂・ほこり・まつ毛

まぶたを持ち上げながら流水で数分間洗眼する。こすることで角膜に傷がつく可能性があるため、こすらせない。洗眼後も異物感・充血が残る場合は眼科受診を検討する。

化学物質(洗剤・酸・アルカリ系液体)

眼の化学外傷で最初に行うことは「中和」ではなく「大量の流水で洗う」だ。中和剤を使うとで二次被害が生じる可能性があり禁忌とされる [5]。アルカリ性物質(漂白剤・石灰など)は酸よりを深く侵食しやすく、洗眼開始までの時間が予後を左右する。現在のコンセンサス(AAO EyeWiki 2023; Kuckelkorn et al. 2002 [6])では少なくとも30分間の持続流水洗眼を推奨しており、医療機関では眼表面の pH が 7.0〜7.4 に正常化するまで洗眼を継続する。自宅での応急処置としても、「少なくとも30分」を目安として流水洗眼を続けながら速やかに眼科または救急を受診する。

角膜異物(金属片・木片など)

拭き取ろうとすると角膜に傷がつく。流水洗眼の後、眼科に行く。


行動レベルへの落とし込み


まとめ

耳・鼻・目の異物対処に共通するのは、「すぐに取ろうとする」前に「見て・確認する」という順番だ。特に眼の化学外傷は数分の遅れが予後に影響することがあるため、洗剤類を扱う場所での事故の場合は素早い洗眼を優先する。


References

  1. Fox G, Bhatt M, Bhatt S, Ramaiah R. Management of paediatric nasal foreign bodies. Arch Dis Child Educ Pract Ed. 2016;101(4):196–198. doi:10.1136/archdischild-2015-308887. PMID: 26976700.
  2. Finkelstein JA. Oral Ambu-bag insufflation to remove unilateral nasal foreign bodies. Am J Emerg Med. 1996;14(1):57–58. doi:10.1016/S0735-6757(96)90015-9. PMID: 8630156.
  3. Schulze SL, Kerschner J, Beste D. Pediatric external auditory canal foreign bodies: a review of 698 cases. Otolaryngol Head Neck Surg. 2002;127(1):73–78. doi:10.1067/mhn.2002.126279. PMID: 12161741.
  4. Mawn LA, Jordan DR, Ostrowski S. Ocular and adnexal emergencies in children. Ophthal Plast Reconstr Surg. 1998;14(3):171–180.
  5. Burns FR, Paterson CA. Prompt irrigation of chemical eye injuries may avert severe damage. Occup Health Saf. 1989;58(4):33–36. PMID: 2527661. [1989年の古い文献。洗眼時間の推奨が現行基準と異なるため、本文の洗眼時間は [6] の最新コンセンサスに基づいて更新済み]
  6. Kuckelkorn R, Schrage N, Keller G, Redbrake C. Emergency treatment of chemical and thermal eye burns. Acta Ophthalmol Scand. 2002;80(1):4–10. PMID: 11906296. doi:10.1034/j.1600-0420.2002.800102.x [現在の化学外傷洗眼の標準文献。少なくとも30分間の洗眼とpH正常化を推奨]