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卵はいつから? 全卵・卵黄・卵白の順番と加熱の意味

読了時間 約 5 分English version available
対象
離乳食開始期(生後5〜7ヶ月)の保護者
文字数目安
1,400字
ステータス
ドラフト v1

3行まとめ

  • ·「卵は遅らせると安全」という考えは現在の合意ではなく、PETIT試験では加熱卵を生後6ヶ月から早期導入したアトピー児で卵アレルギー発症が78%減少した
  • ·加熱(固ゆで10分以上)がなぜ重要かというと、卵白タンパク質は熱変性によって抗原性が10分の1以下に低減されるためであり、生卵や半熟では変性が不完全だ
  • ·初回導入は医療機関が開いている午前中に行い、アトピー重度の場合は自己判断ではなく医師管理下での経口負荷試験から始めることが推奨される

目次

  1. リード
  2. 前提:「加熱した卵」を生後6ヶ月頃から
  3. 本論
  4. なぜ「加熱」が重要なのか
  5. 卵黄→全卵の順番の根拠
  6. PETIT 試験が示したこと
  7. 注意が必要なケース
  8. 行動レベルへの落とし込み
  9. まとめ
  10. References

リード

「卵はアレルギーが心配だから遅らせたほうがいい」——かつてはそのように言われていた。しかし近年の研究は、この考えが逆効果になりうることを示している。現在の合意は「遅らせることがアレルギー予防にならない」であり、むしろ早期導入がリスクを下げる可能性が高いとされる [1,2]。


前提:「加熱した卵」を生後6ヶ月頃から

日本小児アレルギー学会の『食物アレルギー診療ガイドライン 2021』も、加熱した卵を生後6ヶ月頃から開始することを推奨している [5]。「遅らせる=安全」という図式は過去のものだ。


本論

なぜ「加熱」が重要なのか

卵白に含まれるオボアルブミン: 卵白の主要タンパク質で、卵アレルギーの主要な原因抗原の一つ等のタンパク質は、熱変性: タンパク質が加熱によって構造が変化し、アレルゲンとしての活性が低下する現象によって抗原性が大きく低下する。固ゆで(10分以上)にした卵では、生卵と比較してアレルゲン活性が10分の1以下に低減されると報告されている。半熟やスクランブルエッグでは変性が不完全で、アトピー性皮膚炎を持つ乳児には慎重な取り扱いが求められる [1]。

生卵を避けるもう一つの理由はサルモネラ感染だ。乳児は成人より感染時の重症化リスクが高い。この点でも、加熱の徹底は理にかなっている。

卵黄→全卵の順番の根拠

一般的に「卵黄から始めて、次に全卵」という順番が推奨されている。卵白には抗原性の高いタンパク質(オボアルブミン・オボムコイド等)が多く含まれており、段階的に導入することでアレルギー反応のリスクを分散させようという経験的判断だ。

ただし、卵白のほうがアレルゲンとして「強い」という事実は、早期導入を否定しない。PETIT 試験(後述)では固ゆで全卵粉末を使っており、卵黄のみの段階的導入がマストというわけではない。各家庭のアトピー状況や医師の指示に従ってよい。

PETIT 試験が示したこと

PETIT: Preventive Egg Introduction Trial。早期卵導入によるアレルギー予防効果を検証した日本のランダム化比較試験(Preventive Egg Introduction Trial)試験は、アトピー性皮膚炎を持つ生後6ヶ月の乳児を対象に、加熱卵粉末(50mg)を早期導入するグループとプラセボグループに無作為に割り付けた日本の RCT だ [1]。

1歳時点の卵アレルギー発症率は、介入群 8.3%、プラセボ群 37.7% と、78%の相対リスク減少が得られた。アトピーがある子どもこそ、適切な管理のもとで早期に卵を導入することが予防につながる、という逆説的な結論だ。

この知見は、ピーナッツアレルギーに関する LEAP 試験 [2] や、複数のアレルゲンを対象にした JAMA メタアナリシス [3] とも方向性が一致している。「早期導入による経口免疫寛容: 食物を少量ずつ経口摂取することで、免疫系がその食物に過剰反応しにくくなる現象の誘導」は、アレルギー予防の現代的な主軸になっている。

注意が必要なケース

  • アトピー性皮膚炎が重度の場合、自己判断での導入ではなく、医師の管理下での「経口負荷試験」から始めることが推奨される [5]
  • 初回の卵導入は、医療機関が開いている午前中に行い、その後数時間は自宅で様子を観察できる状況にする、という実用的な提案は多くの医師から支持されている

行動レベルへの落とし込み

  • アトピーなしの乳児: 生後6ヶ月頃、固ゆで卵黄を耳かき1杯分程度から開始。1〜2週かけて量を増やし、全卵に進む
  • アトピーあり(軽〜中等度): かかりつけ医に生後6ヶ月時点での卵導入計画を相談。医師の許可があれば少量から開始
  • アトピーあり(重度): 医療機関での負荷試験を先に行ってから導入する
  • 初回のタイミング: 午前中(急変時に受診できる時間帯)に行う
  • 記録の価値: 初回導入の日時・量・その後の皮膚状態・反応を記録しておくと、次回の診察での情報提供に役立つ

まとめ

「卵は遅らせたほうが安全」は現在の合意ではない。加熱した卵を生後6ヶ月頃から始めることは、特にアトピー性皮膚炎がある乳児においてアレルギー発症を予防する可能性がある。PETIT 試験のデータはその根拠として国際的に認知されている。加熱条件と初回のタイミングを意識すれば、多くの家庭で実践できる判断だ。


References

  1. Natsume O, Kabashima S, Nakazato J, et al. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017;389(10066):276–286. doi:10.1016/S0140-6736(16)31418-0. PMID: 27939035.
  2. Du Toit G, Roberts G, Sayre PH, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015;372(9):803–813. doi:10.1056/NEJMoa1414850. PMID: 25705822.
  3. Ierodiakonou D, Garcia-Larsen V, Logan A, et al. Timing of allergenic food introduction to the infant diet and risk of allergic or autoimmune disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2016;316(11):1181–1192. doi:10.1001/jama.2016.12623. PMID: 27654604.
  4. Koplin JJ, Osborne NJ, Wake M, et al. Can early introduction of egg prevent egg allergy in infants? A population-based study. J Allergy Clin Immunol. 2010;126(4):807–813. doi:10.1016/j.jaci.2010.07.028. PMID: 20920766.
  5. 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン 2021. 東京: 協和企画; 2021.
  6. Leonard SA, Nowak-Węgrzyn AH. Clinical diagnosis and management of food protein-induced enterocolitis syndrome. Curr Opin Pediatr. 2012;24(6):739–745. doi:10.1097/MOP.0b013e32835a1b15. PMID: 23007017.

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