卵はいつから? 全卵・卵黄・卵白の順番と加熱の意味

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対象
離乳食開始期(生後5〜7ヶ月)の保護者
文字数目安
1,400字
ステータス
ドラフト v1

リード

「卵はアレルギーが心配だから遅らせたほうがいい」——かつてはそのように言われていた。しかし近年の研究は、この考えが逆効果になりうることを示している。現在の合意は「遅らせることがアレルギー予防にならない」であり、むしろ早期導入がリスクを下げる可能性が高いとされる [1,2]。


前提:「加熱した卵」を生後6ヶ月頃から

日本小児アレルギー学会の『食物アレルギー診療ガイドライン 2021』も、加熱した卵を生後6ヶ月頃から開始することを推奨している [5]。「遅らせる=安全」という図式は過去のものだ。


本論

なぜ「加熱」が重要なのか

卵白に含まれる等のタンパク質は、によって抗原性が大きく低下する。固ゆで(10分以上)にした卵では、生卵と比較してアレルゲン活性が10分の1以下に低減されると報告されている。半熟やスクランブルエッグでは変性が不完全で、アトピー性皮膚炎を持つ乳児には慎重な取り扱いが求められる [1]。

生卵を避けるもう一つの理由はサルモネラ感染だ。乳児は成人より感染時の重症化リスクが高い。この点でも、加熱の徹底は理にかなっている。

卵黄→全卵の順番の根拠

一般的に「卵黄から始めて、次に全卵」という順番が推奨されている。卵白には抗原性の高いタンパク質(オボアルブミン・オボムコイド等)が多く含まれており、段階的に導入することでアレルギー反応のリスクを分散させようという経験的判断だ。

ただし、卵白のほうがアレルゲンとして「強い」という事実は、早期導入を否定しない。PETIT 試験(後述)では固ゆで全卵粉末を使っており、卵黄のみの段階的導入がマストというわけではない。各家庭のアトピー状況や医師の指示に従ってよい。

PETIT 試験が示したこと

(Preventive Egg Introduction Trial)試験は、アトピー性皮膚炎を持つ生後6ヶ月の乳児を対象に、加熱卵粉末(50mg)を早期導入するグループとプラセボグループに無作為に割り付けた日本の RCT だ [1]。

1歳時点の卵アレルギー発症率は、介入群 8.3%、プラセボ群 37.7% と、78%の相対リスク減少が得られた。アトピーがある子どもこそ、適切な管理のもとで早期に卵を導入することが予防につながる、という逆説的な結論だ。

この知見は、ピーナッツアレルギーに関する LEAP 試験 [2] や、複数のアレルゲンを対象にした JAMA メタアナリシス [3] とも方向性が一致している。「早期導入によるの誘導」は、アレルギー予防の現代的な主軸になっている。

注意が必要なケース


行動レベルへの落とし込み


まとめ

「卵は遅らせたほうが安全」は現在の合意ではない。加熱した卵を生後6ヶ月頃から始めることは、特にアトピー性皮膚炎がある乳児においてアレルギー発症を予防する可能性がある。PETIT 試験のデータはその根拠として国際的に認知されている。加熱条件と初回のタイミングを意識すれば、多くの家庭で実践できる判断だ。


References

  1. Natsume O, Kabashima S, Nakazato J, et al. Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2017;389(10066):276–286. doi:10.1016/S0140-6736(16)31418-0. PMID: 27939035.
  2. Du Toit G, Roberts G, Sayre PH, et al. Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy. N Engl J Med. 2015;372(9):803–813. doi:10.1056/NEJMoa1414850. PMID: 25705822.
  3. Ierodiakonou D, Garcia-Larsen V, Logan A, et al. Timing of allergenic food introduction to the infant diet and risk of allergic or autoimmune disease: a systematic review and meta-analysis. JAMA. 2016;316(11):1181–1192. doi:10.1001/jama.2016.12623. PMID: 27654604.
  4. Koplin JJ, Osborne NJ, Wake M, et al. Can early introduction of egg prevent egg allergy in infants? A population-based study. J Allergy Clin Immunol. 2010;126(4):807–813. doi:10.1016/j.jaci.2010.07.028. PMID: 20920766.
  5. 日本小児アレルギー学会. 食物アレルギー診療ガイドライン 2021. 東京: 協和企画; 2021.
  6. Leonard SA, Nowak-Węgrzyn AH. Clinical diagnosis and management of food protein-induced enterocolitis syndrome. Curr Opin Pediatr. 2012;24(6):739–745. doi:10.1097/MOP.0b013e32835a1b15. PMID: 23007017.