赤ちゃんの「うんちが出ない」— 機能性便秘とヒルシュスプルング病の見分け方

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対象
乳児の便秘に悩む保護者、新生児期から排便困難を指摘された親
文字数目安
1,400字
ステータス
ドラフト v1

リード

「3日うんちが出ていない」という相談は、乳児を持つ保護者から最も多く寄せられる悩みのひとつだ。多くの場合は機能性の問題で、時間とともに解決する。しかし稀に、消化管神経の先天的な異常であるヒルシュスプルング病が背景にあることがある。

この2つを混同しないためのポイントは何か。そして、どのような変化があれば受診を急ぐべきか——この記事ではその判断軸を整理する。


「便秘」の定義から確認する

乳幼児の便秘には、国際的な診断基準として が用いられる。新生児〜4ヶ月未満では「週2回未満の排便」、4ヶ月以降の乳児では「週2回以下の排便」に加え、硬い便や排便時の苦痛が組み合わさった状態を機能性便秘(FIC)と定義している [1]。

一方で、母乳栄養の乳児では数日に1回しか排便しないことが正常範囲内であることも多く、「日数だけで異常か判断することは難しい」という前提が重要だ [1,2]。便の性状(硬さ・量)と機嫌・哺乳量の変化をあわせて評価することが基本となる。


機能性便秘の特徴と家庭での対処

乳幼児の機能性便秘は全体の約3〜5%に生じるとされ、多くは特定の器質的疾患を持たない [2]。典型的には、赤ちゃんが顔を真っ赤にしてきばるが、出た便は柔らかい——というパターンだ。排便に努力が要るのは腹圧のかけ方がまだ未熟なためで、便そのものは正常なことが多い。

対処として、水分補給の確認、マッサージ(脐の周りを時計回りに)、綿棒刺激などが臨床で用いられる。ただしこれらの非薬物療法の効果に関するエビデンスは限定的であり、改善がみられない場合は小児科への相談を検討する [3]。


ヒルシュスプルング病の警戒サイン

(先天性巨大結腸症)は、腸管壁内のが先天的に欠損することで腸のが障害される疾患だ。有病率は約1/5,000出生で、男児に多い [4]。

最も重要な警戒サインのひとつは、「生後48時間以内に胎便が排出されなかった」という情報だ。胎便の排出遅延はヒルシュスプルング病との関連が示されており、感度は報告によって異なるが78〜94%に達するとされる [4]。

加えて、以下の組み合わせは機能性便秘との鑑別で重要な手がかりになる:

確定診断には直腸生検による神経節細胞の確認が必要で、これは医師が行う処置だ [4]。日本全国の手術例では、男女比は約4〜5:1とされている [5]。


受診の目安

機能性便秘の経過観察が適切なケースと、早めの受診が必要なケースの境界は、「症状が複数重なっているか」で大まかに判断できる。

速やかに受診を検討する状況:

日常の便の色・硬さ・量と排便日時を記録しておくことは、受診時の情報として直接役立つ。「いつから」「何日おき」「どんな便か」というデータは、医師が機能性と器質性を鑑別する上での重要な手がかりになる。


まとめ

乳児の便秘の大半は機能性で、経過観察が適切な場合が多い。しかし「生後48時間以内の胎便排出遅延」「腹部膨満+哺乳不良の複合」という組み合わせは、ヒルシュスプルング病を念頭に置いた評価が必要なサインだ。「日数だけで判断しない」「症状の組み合わせを見る」という姿勢が、不要な不安を減らしながら必要な受診を遅らせないことにつながる。


References

  1. Benninga MA, Faure C, Hyman PE, St James Roberts I, Schechter NL, Nurko S. Childhood functional gastrointestinal disorders: neonate/toddler. Gastroenterology. 2016;150(6):1443–1455.e2. doi:10.1053/j.gastro.2016.02.016. PMID: 27144631.
  2. Mugie SM, Benninga MA, Di Lorenzo C. Epidemiology of constipation in children and adults: a systematic review. Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2011;25(1):3–18. doi:10.1016/j.bpg.2010.12.010. PMID: 21382575.
  3. Catto-Smith AG. Constipation and toileting issues in children. Med J Aust. 2005;182(5):242–246. doi:10.5694/j.1326-5377.2005.tb06677.x. PMID: 15740720.
  4. Heuckeroth RO. Hirschsprung disease — integrating basic science and clinical medicine to improve outcomes. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2018;15(3):152–167. doi:10.1038/nrgastro.2017.149. PMID: 29300049.
  5. Suita S, Taguchi T, Ieiri S, Nakatsuji T. Hirschsprung's disease in Japan: analysis of 3852 patients based on a nationwide survey in 30 years. J Pediatr Surg. 2005;40(1):197–201. doi:10.1016/j.jpedsurg.2004.09.052. PMID: 15868582.